微熱交じりの風邪を拗らせ、リビングで大の字。
昇りきった陽の光がカーテン越しに部屋を照らす。
昨晩発作的に発生した肩の痛みは、まだ治らず、咳き込むたびに刺激する。
今は立ち上がる気力さえ俺には沸いてこない。
少し動けるようになったら医者に見てもらおうと考えながら、少し背の高い天井を虚ろに見つめる。
大きな音が近づいてくるのが解った。
空から落ちてくるような音。
それは俺を目掛けてくるように、だんだん大きくなる。
空が見えない俺にはその正体はわからない。
天井越しから落ちてくるその音は、いつだって俺を恐怖させる。
小さい頃に見た映画。
20年近く前に見た映画。
タイトルも内容もボケてしまったアニメ映画。
主人公は当時の俺と同じような年頃の兄弟。
兄弟は幼稚園児だっただろうか。
その日兄弟は風邪を拗らせて幼稚園を休んだ。
いつだって元気な兄弟だったがその日は幼稚園を休んだ。
米軍の飛行機だった。
パイロットは安定しない機体を捨てて、空へと逃げたした。
機体はそのまま家に落ちた。
家には兄弟がいた。
空から落ちてきた機体から、外へ逃げる事はできなかった。
兄弟は病院へ運ばれそこで死んだ。
あの時の俺はなんであの映画を見たのだろう。
あの映画は俺に何を伝えたかったのだろう。
俺に残ったのは、空から落ちてくるという恐怖だけだ。
いつもは外に行っていた。
風邪で動けなかった。
パイロットは生きていて、子供は死んだ。
今の俺は小さい子供ではないが、いつも外にいて今は風邪で動けない。
大きな音はもっと大きくなり、一番大きくなった後から小さくなっていく。
落ちてはこなかった。
きっと一生落ちては来ない。
だけどきっと臆病な俺は一生恐怖し続ける。
あの時、あの映画を見てしまったから。
落ちてきた時の運命を知ってしまったから。





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